こんにちは!桧田真理子です。
子どもは、お気に入りの絵本は何度でも「読んで」と言いますよね。大人からすれば、同じ本を何度も読んで、一体何が楽しいんだろう?と不思議に思うほどです。
私も息子の繰り返し絵本に「またか(笑)」と思う大人になってしまった訳ですが、
実は自分が保育園の頃、何度も同じ本を借りていた記憶が残っています。
その本の名前は、「アライグマじいさんと15匹の仲間たち」。
しずかもりで仲良く暮らす動物たちのお話です。
〜あらすじ〜
みんなで仲良く楽しく暮らしていたある日、不気味な唸り声が響きます。
音の正体をアライグマじいさんが調べにいくと、森を破壊するブルドーザーなどのかいぶつじどうしゃがすぐ近くまで押し寄せていることがわかります。
動物たちは、
安全な森を求めて汽車の屋根にに飛び乗り、しずかもりを後にします。
ドブ川が流れる大きな街や大きな駅を通り抜け、あきらめかけた頃、
またしずかな森を見つけました。めでたしめでたし。
この絵本を保育園で何回も借りていました。
あまりにも何回も借りすぎて、貸し出しのために必要な”図書カード”を先生に書いてもらう時、
「まりちゃん、いつも同じだから、タイトルは”テンテン”で良い?」と言われ、テンテンとかかれてしまうほどでした。
大人になって、息子に読み聞かせをし始めた頃、
ふと、この本のことを思い出し、もう一度読みたくなりました。
朧げな記憶を頼りにネットで調べてみると、取り寄せることができました。
実は、先生に「テンテン」と書かれしまった事が悲しくて、パタリと借りなくなってしまったのです。
その日以来の再会でした。
どうして当時の私はこのお話に心を惹かれたんだろうと改めて本をめくっています。
もしかしたら、心の奥深く深くに存在する、魂の記憶のようなものと何かリンクしているのでしょうか。
先日、ラジオの収録でこのお話を話題にしたところ、ゲストのこゆきさんから
「それはさ、先生に長いタイトルを書いてもらうのが嬉しかったんじゃない!?」と言われて
「確かにそうかもしれない」とハッとさせられました。
図書カードの小さなスペースに、先生が長いタイトルを見事に書き上げてくれるのを見ているのが、すごく嬉しくて特別な感じがして、ワクワクしている記憶が蘇ってきたのです。
「なんだ、そんな事か」と笑ってしまいました。
だから何回も借りているうちに、上の段と同じだからと、先生が「テンテン」と書いてしまった事がとても悲しかったのです。
子どもの本が読みたくなるきっかけは、そんな些細な喜びからなのだろうと改めて思います。
あの時の記憶を振り返ってみると、
「大人はどうしてこんなに大切な瞬間を省略してしまうんだろう」という小さな子どもの疑問の声が聞こえてくるようです。
いつしか私も大人になり、合理的で効率的な方が良いという価値観が染み付いています。その瞬間瞬間を丁寧に味わうことを忘れがちです。
けれども小さな頃は、「小さなマスにぴったりと長いタイトルを書いてもらう」という、一見どうでも良いことに喜びを見出していた自分がいたのでした。
もしかしてあの時、「先生にタイトルを書いてもらうのが好き」と気持ちを言葉にできていたら、もう少し小さなことにこだわる自分を大切にできていたのかもしれません(笑)
けれどもあの時は、言葉にする事がいけないことのような気がして、そうした気持ちにに蓋をしてしまったように感じます。
一冊の本の思い出から、あのころの自分に再び出会えたような気がしたのでした。
絵本はそんな小さな自分と今の自分を結ぶ、架け橋の役目をしてくれることもあるんですね。
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