こんにちは、桧田真理子です。
先日、4歳の姪っ子がうちに遊びにきました。
バーバとママがお買い物している間、私と姪っ子は本屋さん2人で待っていることになりました。
「何か本を読んであげようか?」というと、姪っ子は喜んで、大好きなディズニーのお話を選んできました。後からママに聞くと、家にあるけれど、おうちではあまり読まない本のようでしたが、最後までじっくりと聞いてくれていました。
2人で過ごしたのは、多分、10分か15分程度でしょうか。
けれども面白いことに、この時間が、姪っ子と私の心の距離をグーンと近くしてくれたように感じたのです。
実は久しぶりに会ったばかりの時は、私に遠慮しているのかな?と思っていたのですが、本屋さんで過ごした後は、姪っ子から手を繋ぎにくるほどでした(笑)
普段働いている幼児教室でも、度々本を読み聞かせる時間があります。
この時も、読み聞かせした後、子どもともっと仲良しになれたような気がするのです。
なぜでしょうか?
最近読んだ本に、こんな言葉があり、「なるほど!」と思いました。
「子どもに本を読んでやる時、その声を通して、物語と一緒に、さまざまなよいものが、子どもの心に流れ込みます」
(松岡享子 「えほんのせかい こどものせかい」より)
大人の声に乗って子どもの心に運ばれているものは、物語だけではありません。
松岡さんは、読み聞かせという行為の中に「子どもは、大人の自分に対する愛情を感じ取っている」と言います。
単にお話を聞くのであれば、有名な朗読家の録音の方がよほど上手で聴きやすいでしょう。
けれども子どもは、近くにいる大人に本を読んでもらうことが好きなのです。
大人と子どもが絵本を通じて同じ空間を共有するとき、「あなたのことを大切に思っているよ」という気持ちが、声を通して子どもの中に流れ込み、心を温めてくれているのかもしれません。
だから絵本は大人と子どもの心の橋渡し役であり、心の距離を近づけてくれるように思います。
そう思うと、子どもの心にさまざまな良いものが流れ込む絵本は、子どもの大切なある力を育むのにとっても良いツールのように感じます。
それは「言葉を聞く力」。
実は、幼児教室では、「話せること」よりも「よく聞くこと」が重視されています。
なぜなら、「聞くこと」が「話すこと」の土台になるからです。
教室では、幼児さん(3歳児)になると、プログラムの中に発表の時間が加わります。
みんなの前に出て、「お母さんの名前は〇〇です」とか、「誕生日は◯月です」とお話するのです。
レッスンの後、子どもに「ちゃんと言えたの?」「なんて言ったの?」と気にして尋ねるお母さんがいます。
何も言えなかったとわかると、今度は「お母さんの名前は〇〇だよ」「お誕生日は◯月だよ」と一生懸命教えようとしています。
発表で出てきた言葉は、その子が感じた何かの”ひとかけら”に過ぎません。
何も体験や感覚のないところからは、言葉は生まれてこないのです。いつもそのことを意識してお伝えするようにしています。
「〇〇ちゃんはね、寒い12月に生まれたんだよ。空気が澄んでいて、青い綺麗な空が広がって、とても気持ちの良い日だったなあって覚えているよ。」
そんな風に、お母さんが話してあげると、子どもの心にお誕生日と自分が生まれた日の景色が結びついて、物語が刻まれます。「良い日に私は生まれたんだ」というお母さんのお話は、子どもにとっても嬉しい感覚でしょう。
すると、発表の時、その感覚が本当の言葉となって表れます。ただママに「誕生日は12月よ」と教えられた通りに話すよりも、表情や目の輝きが全く違って生き生きとしています。
普段ママが子どもにどんなお話をしていて、何を聞いているかが、発表が上手にできることよりも、大切なことなのです。
お母さんのお話と同じように、物語とともに大人の様々なよいものが流れ込む絵本の言葉の響きは、子どもにとって何よりも心地の良いものでしょう。
一つ一つの言葉に、子どもは喜んで耳を傾け、想像しながら、自然と「聞く力」を養っていきます。
子どもにとって心地の良い言葉のプレゼント。
そんな一面も、絵本にはあるように感じています。
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